会員のビジネスモデル事例:フラット・エージェンシー②(京都宅建所属)/全宅連 不動産総研【RENOVATION】より

調査・レポート

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  • 2019.07.23

全宅連不動産総合研究所では、住宅確保要配慮者への居住支援や街づくり・地域活性化、空き家対策等、ハトマーク会員をはじめ全国の事業者が自らの事業を通じて社会や地域に貢献し、ビジネスとして成立させている先進的なビジネスモデルを自ら取材し、毎年報告書『RENOVATION』としてとりまとめ、ホームページで公表しています。

今回は『RENOVATION2018』に掲載の㈱フラット・エージェンシー(京都)の事例(後編)です。

前編はコチラ

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不動産業は地域に根差した「まちづくり業」
~若手起業家、学生、留学生を支援し、地域を活性化させる~
株式会社フラット・エージェンシー 代表取締役 吉田創一氏
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(この記事は全宅連不動産総合研究所が2018年6月に発行した『RENOVATION2018』に掲載された内容の転載です。掲載内容は2017年9月取材当時のものです。)

■学生や留学生を支援し、課題を解決する

─賃貸物件もさまざまな形態で運営されています。「シェアフラット」について教えてください。

吉田社長:「シェアフラット」は十数年前に始めました。管理していたマンションで学生が自殺したことがきっかけです。周りの人に聞くと本人には誰も相談する人がおらず、悩みを1人で抱えてしまっていたようです。そこで、学生向けの賃貸物件をシェアハウス方式にして入居者間で交流ができる物件を開発しました。

コンセプトを“not alone 1人暮らしだけど1人じゃない”とし、名前はシェアハウスとアパート(フラット)をかけ、商標登録もしました。この方式にすることで家賃も安く抑えられるため学生にはさらにメリットが出ます。かねてからビジネスを通じて社会の課題解決をしたいと考えていましたが、シェアフラットがその1つの解になりました。大学に案内すると好評で100室単位で借り上げてもらっています。

現在20棟運営していますが、物件毎にフェイスブックを設けたり、新入生歓迎会や座談会形式で就職セミナーなどもしています。

─マンスリーマンションはどのような人が対象なのですか?

吉田社長:マンスリーマンションを始めたのは、佛教大学から夏のスクーリングで全国から短期間人が来るのでなんとかならないか、という相談があり、空き部屋を短期間貸したことがきっかけです。京都には大学だけでなく京セラやロームなどの大企業があり、全世界から研究者が1カ月から1年単位でやってきます。

研究者がトランク1つでやってきて、その期間暮らせるキッチンと家具付きの部屋のニーズが年々高まっており、今では売上の2割以上を占めるようになりました。そのような部屋が京都では250室あり、平均稼働率は85%ですので、ほぼ空きがない状態です。敷金・礼金・仲介手数料なしで貸していますが、大学や大手企業が借主なので安心です。

─留学生の支援も熱心にされています。

吉田社長:京都市には現在1万人の留学生がいますが、1万5,000人まで増やそうと計画しています。大家の意識は大分変わってきましたが、受け入れる物件はまだ少ないのが実情です。そこで、当社では7年前に、他社に先駆けて複数名の外国人を正社員で雇用しました。彼らには部屋探しだけでなく、ゴミ出しの指導や入居ルールの説明などと共に、生活面での困りごとの相談といったサポートもしてもらっています。入居審査も家賃保証も当社が行いますが、住み方をきちんと理解してもらっているので事故は全くありません。そのおかげで大家の理解も進み、海外の研究者や留学生を年間約300件程度斡旋できるようになりました。

さらに、京都市が留学生の就職支援や交流促進をしようと立ち上げた「京都グローカルセンター」というプロジェクトにも参加しています。
入居した留学生と話していたら、“就職の応募の仕方がわからない”“大手企業しか受けていない”という話を聞きました。そこで、地元京都にも素晴らしい会社があることを知らせようと、当社が主催して留学生向けのセミナーをしています。このような長年の取り組みが認められて(公財)京都府国際センターから感謝状が贈呈されました。

■本業を通じて社会の課題を解決する

─ユーザーの声に真摯に耳を傾けて事業展開されています。

吉田社長:2017年には、京都のまちの課題を不動産を通じて解決してきたことが評価され、京都市ソーシャルイノベーション研究所から第2回「これからの1000年を紡ぐ企業認定」を受けました。学生でも留学生でも差別せずお客様1人ひとりの声を聞いて、それに対してどうしたら応えられるのか、という事をずっと考えています。

「THE SITE」では改修費用に4,500万円という見積もりが来た時には悩みましたが、芸大の学生から、卒業後に活動する場所がないという話をずっと聞いていましたので、社会のためだと思い投資を決断しました。新大宮商店街も、“だんだんシャッターが多くなったね”という地元の人の話がきっかけで始めましたし、シェアフラットも痛ましい事故がきっかけでした。きっかけは何であれ、社会の要望が高い事業には必ず実績がついてきます。

吉田社長:新しいプロジェクトに取り組むには、自らリスクをとることが大切ですが、その決断が難しいのも事実です。しかし最終的には、“その事業が社会の役に立つのか”“その事業が社会の課題を解決するのか”という視点で思い切って判断していくことが大事だと思います。

よく京都は“勝ち組のまちだ”といわれますが、それだけ大手や競合は参入してきますし、人口減少の中でこの先どうしていくのか、日々悩んでいます。学生は大勢いますが、下手をすれば京都に4年間いるだけで、素通りされるまちになってしまう危機感があります。

順調に業績が伸びているのも社員のおかげです。社員はインセンティブや人事制度ではなく“お客様の喜びが私たちの喜び”“社会に貢献し社会から必要とされる企業になる”という企業理念に共感してくれています。就職セミナーでも、「君たちの仕事は不動産業ではなく“まちづくり業”だよ」と説明しています。

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【株式会社フラット・エージェンシー】
代表者:吉田 創一
所在地:京都市北区紫野西御所田町 9-1
電 話:0120-75-0669
H  P:https://flat-a.co.jp/
業務内容:賃貸仲介や不動産売買、建築、リフォーム業をはじめ、京町家の保全と再生に関わる事業や、短期滞在型賃貸などを展開する。また、新大宮商店街の活性化などにも積極的に取り組んでおり、多目的スペース等を併設した地域の交流サロン『TAMARIBA』を運営している。

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この事例が掲載されている報告書『RENOVATION2018』の全編は全宅連ホームページからご覧いただけます。
RENOVATION2018(PDF)[80MB]